東日本大震災10年の軌跡
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記憶と経験を次代に継ぐ第10章商工会議所による復興に向けた要望・提言3.鎌田会頭による農水産品・食品の輸入規制撤廃・緩和の要望2019年9月10日から12日にかけて行われた、日中経済協会、日商、経団連による合同訪中の中で、国家発展改革委員会との全体会議の席上、鎌田会頭が日商副会頭の立場で発言。このほか、李克強首相との会見の場でも三村日商会頭から本件について要望。※以下、鎌田会頭の発言要旨。8年前の東日本大震災の際は、中国の皆さまからも、多大なるご支援をいただき、この場を借りて、まずは深く感謝申し上げる。地震による大津波で甚大な被害に見舞われた被災地は着実に立ち直りを見せ、今では、大変多くの外国人旅行客の皆さまにも足を運んでいただけるようになった。とりわけ中国人旅行者の皆さまには大変多くお越しいただいており、ありがたく存じている。例えば、仙台に中国文学を代表する作家・魯迅先生の留学先として有名な東北大学があるように、日本には中国との友好を示す地がたくさんある。私どもとしては、両国の交流活性化に向け、中国の皆さまに、いわゆる東京・大阪・京都などのゴールデンルートのみならず、今後も被災地をはじめとした日本のさまざまな地域を訪れていただけるよう、一層努めてまいりたいと思っている。このように人的交流が活発化する一方、農水産・食品分野の交易に目を向けると、東アジア諸国を中心とした厳しい輸入規制が、日本の10都県という広いエリアにおいていまだ続いており、産業振興の大きな足かせになっているのが現状だ。こうした状況を打開するため、例えば、東日本大震災最大の被災地である宮城県の石巻市では、最新鋭の水産物検査機器を導入し、福島県でも農産物の定期的な検査を実施するなど、各地では、放射性物質基準について、震災前以上に徹底して、科学的根拠に基づく正確な情報を発信しながら、食の安全・安心を訴え続けている。その甲斐もあり、現在、各国の輸入規制に関しては、32の国・地域で撤廃され、16の国・地域で緩和の動きがあるなど、改善の兆しが見え始めている。中国当局におかれても、昨年11月、新潟県産の米の輸入停止措置を解除いただいた。このたびのご判断は、今後の各国における規制撤廃・緩和の動向に大きな影響を与えるものと、大変ありがたく存じている。被災地をはじめとした日本の各地においては、農水産業を基幹産業とする地域も多く、農水産物の交易拡大は、日本国内における地域振興にとって不可欠だ。今や、被災地にも多くの中国の皆さまにお越しいただいており、現地の食を堪能いただいている。私どもとしては、農水産物の交易を拡大する事で、日本の食を再び自国でも召し上がりたいという皆さまはもちろん、まだ日本の食を口にされたことのない皆さまにも、日本の質の高い食材をお届けしたい。「食」というのは、人や地域の交流を盛んにする上で、大変重要な鍵を握っている。農水産・食品の交易拡大をきっかけに、両国の経済全般においても、さらなる交流発展が図られるものとも存じているので、いまだ残る日本産食品の輸入規制の撤廃・緩和について、今後もぜひ、特段のお取り計らいをいただくようお願い申し上げたい。おります。つきましては、大使館においては、農林水産物等の安全性に関する正確な情報発信と、わが国の農林水産物等の安全性にかかる信頼性の回復を図るとともに、厳しい規制を続けている韓国に対して、一刻も早く輸入規制が撤廃され、両国間における水産物の流通回復・拡大が図られるよう、特段のご支援をお願い申し上げます。113

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