東日本大震災10年の軌跡
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第1部現場の意見を事業に反映発災直後、2011年の3月から4月にかけて応援職員の手を借りながら実施した巡回では、宮城野区と若林区の約2,000事業所を訪問。青葉区、太白区、泉区の約5,000事業所については電話での安否確認を行い、被災状況、営業状況、営業再開までの課題、要望等をヒアリングした。また、4月に入ってからは、支援策構築の基礎資料とするため、当所議員企業を中心としたメールアンケートを実施した。震災から8カ月が経過した11月には、初期調査で「被害あり」とした事業所に対して営業状況や課題等の追跡調査を行い、事業所有無、営業状況、震災後の建物・設備被害や従業員数・売上、今後の課題等のヒアリングを行った。議員向けに行ったアンケートでは、実に9割が直接または間接的に影響を受けていると回答し、残り1割に関してもその後の影響を危惧する声が大半であった。そこで仙台商工会議所では、例年4月の会費納入依頼を6月に延期し、4月と5月の2カ月分は減額する措置をとった。議員企業に関しては原則的に減額をせずに、大口会員事業所とあわせて、直接訪問しながら納入を依頼した。厳しい財政状況となることが予想される中、それでも復旧・復興に取り組まなければならないことから、この年は2度にわたる補正予算により対応を図った。会費に関して、最終的には100%を超える予算達成率となり、納入依頼に対する入金率も90%を超えた。この翌年以降、以前から進めていた積極的な組織強化の取り組みもあり、仙台商工会議所の会員数は増加を続け、2020年にはコロナ禍でありながら、16年ぶりに9,000会員まで回復した。こうした推移にはさまざまな理由が考えられるが、発災1年目の会費納入率も含めて考えると、震災時における諸活動が評価されたこと、会員事業所と日頃から関係性を築けていること、そして多くの方に商工会議所事業を理解していただけていることの証ではないだろうか。災害時に最も重要なのは正確な情報だ。大変な時にこそ事業者との接点を持ち、状況を把握した上できちんとした情報を伝えることは商工会議所の使命とも言える。こうした取り組みを重ね、仙台商工会議所は地域企業の復旧を支えてきたのである。会員ニーズの把握と情報発信3全国の商工会議所から派遣された応援職員と共に会員訪問し安否を確認。この応援職員による巡回は、後に「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」へとつながっていくことになる(34ページ参照)。少しずつ落ち着きを取り戻す事業所も出てきた発災1カ月ころからは、震災対応に関するセミナーや講習会、説明会も開催しながら、会員事業所に対する支援情報の発信に努めていった。こうした、さまざまな支援の枠組みも含めた各種情報については、郵便事情の回復にあわせて「東日本大震災災害対策情報」を発行したのをはじめ、月報「飛翔」、ホームページ、メールニュースなどを活用して周知した。仙台商工会議所 東日本大震災 10年の軌跡28

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