東日本大震災10年の軌跡
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第1部そうした本事業の目論見は徐々に芽を出し始める。当初は、自ら売り込みに出向いても成約に至らなかった企業が、本事業のサポートを受けるうちに商談力を身に着け、自社だけでしっかりと商談を成立させることができるようになっていった。また、各地にコーディネーターを派遣するなどしながら、商談会に立ち会って知識を蓄えてきた商工会議所経営指導員のさらなるスキルアップを後押ししていくと、独自商談会の開催が試みられるなど、地域としての自立を模索する例も生まれてきたのである。三陸ブランドの売り込みと新たな販路開拓に向けた取り組み沿岸部の基幹産業は、水産業、水産加工業だ。これらの販路回復が進まないと、真の復興を果たすことは不可能である。こうした沿岸部の強みである水産物や水産加工品を売っていくためには、世界三大漁場ともいわれる「三陸」というブランドの知名度をさらに高めていくことが求められた。そこで、2014年、水産庁による復興水産加工業販路回復促進事業の一環で、東北六県商工会議所連合会、大日本水産会、全国水産加工業協同組合連合会、日本水産資源保護協会の4者がコンソーシアムを組み、翌2015年からは東北六県商工会議所連合会が中心となって「東北復興水産加工品展示商談会」を開催してきた(2019年まで連続5回開催。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により中止)。これは、青森、岩手、宮城、福島、茨城県内の沿岸部商工会議所の水産加工業者による、東北最大級の水産商談会で、毎年5,000人規模のバイヤー・サプライヤーが来場した。まさに官民の垣根を取り払った広域連携による画期的な水産商談会である。翌年には、東北経済産業局など関係機関との連携により、三陸ブランドの構築を目指す「三陸地域水産加工業等振興推進協議会」を設置(事務局:東北経済産業局)。鎌田会頭が東北六県商工会議所連合会会長の立場で代表を務めながら、三陸地域が水産に関する世界のトップブランド・産地として認知されることを目指して始動した。2018年には、企業の海外展開を見据えた支援も必要という観点から、七十七銀行と「海外ビジネス支援等に関する協力協定」を締結した。この枠組みにより、毎年、仙台商工会議所職員1人を同行シンガポール駐在員事務所に1カ月間派遣し、東南アジアのマーケッ「東北復興水産加工品展示商談会」では関連セミナーや個別商談会も実施。総合的な情報の発信と収集の場として多くの来場者、出展者でにぎわった。仙台商工会議所 東日本大震災 10年の軌跡46

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