東日本大震災10年の軌跡
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東日本大震災後、宮城県は気仙沼市の内湾地区(魚町・南町)にT.P.6.2メートル(※)の防潮堤を整備する計画案を発表した。しかしまちから海への眺望が遮られるため、気仙沼市民からは計画反対の声があがった。市と市民は、連携を取りながら“海が見える高さ”と“まちの安全性の確保”の両立をめざして宮城県と幾度も交渉を重ねた。こうした動きを受け、2012年10月の宮城県議会で「住民合意を尊重した海岸防潮堤の建設についての決議」が可決。その後、内湾地区の防潮堤の計画高は5.1メートルまで下げられることとなった。※T.P./東京湾平均海面(Tokyo Peil:T.P.)。全国の標高の基準となる海水面の高さ。施工ミスで生じた計画よりも22センチメートル高い防潮堤の問題を解決し、現在、内湾地区には観光集客施設、複合型公共施設、商業施設等が建ち並ぶ。防潮堤の基部を見えにくくする工夫等がなされた景観は、グッドデザイン賞、日本都市計画学会・学会賞を受賞。また観光客に人気のスポットとなり、新たなにぎわいが創出された。都市整備・まちづくりにおける市民との合意形成―気仙沼市内湾地区の防潮堤計画―COLUMN気仙沼市・内湾地区の施設。「迎(ムカエル)」、「結(ユワエル)」、「拓(ヒラケル)」、「創(ウマレル)」という4つが整備され、地域の新たなにぎわい拠点となっている。気仙沼市・内湾地区の防潮堤69

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