東日本大震災10年の軌跡
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広域的な視点により変化するニーズに対応した復旧・復興への要望地域企業の声を取りまとめ、その実現を働きかける「意見要望活動」は、商工会議所にとって1丁目1番地の事業だ。未曽有の大災害からの復旧・復興にあたっては、国を挙げての支援を求めることが不可欠である。そのため、商工会議所では、復興のステージごとに数多くの要望活動を行ってきた。最初の要望は、発災からわずか12日後の2011年3月23日、東北六県商工会議所連合会および東北6県の各県商工会議所連合会の名前で、国の出先機関や地元の行政、および各地選出国会議員などに対して行った。ここでは、発災直後ということもあり、人命を最優先としてライフラインの復旧を前面に出しながら、地域中小企業への思い切った支援やインフラの回復を求めた。この時点で、後々まで課題として残る風評被害の払拭についても既に触れている。過去、宮城県北部で発生した地震が観光誘客に打撃を与えた記憶と経験を生かした格好だ。4月に入ってからは、21日に鎌田会頭が、日本商工会議所の常議員会・議員総会後の記者会見で、全国の過度な自粛ムードの払拭と、東北地方の産品・製品の購入による支援を呼び掛けるとともに、同30日には国の第3回東日本大震災復興構想会議における関係者ヒアリングで、日本商工会議所を代表し、既存債務の軽減などといった被災中小企業の救済・支援や、被災地域への復興庁設置などを提言した。発災から数カ月が経つと、ようやく必要な支援をじっくり整理できる程に落ち着いてきたこともあり、集中的に要望活動が行われた。2011年6月、宮城県、仙台市、仙台商工会議所、仙台空港国際化利用促進協議会(会長:鎌田会頭、当所事務局)で、「東北地方への誘客促進等についての要望」を行った。同年7月には、宮城県商工会議所連合会や東北六県商工会議所連合会で毎年定例的に行っていた要望活動を、震災復興を柱とする内容で実施した。東日本大震災沿岸部被災地区商工会議所連絡会(84ページ参照)による初めての要望もこの月に行われた。仙台商工会議所としても、同じく7月に、仙台復興推進委員会(81ページ参照)による「仙台復興推進に関する第1次提言」を取りまとめた。発災1年目は、刻々と被災地の状況が変化し、日を追うごとに新たな課題が浮き彫りになっていった。そのため、こうした要望は、頻繁に加筆・修正し、現場の声がタイムリーに届くよう常に意識しながら内容を変えていった。翌年の2012年度からは、日本商工会議所による政府への復興に関する要望が毎年3月に定例的に行われることとなり、商工会議所の総意として復興推進を求める枠組みが鮮明になった。この日本商工会議所の要望には、毎年必ず、鎌田会頭が、日本商工会議所副会頭、東北六県商工会議所連合会会長の立場で同席し、被災地の現状と生の声を政府関係者に直接伝えながら、適切な支援を求めている。記憶と経験を次代に継ぐ第10章商工会議所による復興に向けた要望・提言村井嘉浩宮城県知事へ要望書を手渡す鎌田会頭(2011年3月23日)。地域の声を強力に発信187

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